IYO DENTAL ASSOCIATION

講師の紹介とセミナーの内容

第3回 角町 正勝先生
     地元より 大塚 恵先生・松本 満津枝先生・竹尾 美都子先生・安部 博恵先生

 角町 正勝先生はそもそも小児歯科医。市歯科医師会公衆衛生担当理事になったのを契機に長崎市の救急病院と市歯科医師会との連携を進め、脳血管障害の急性期からの口腔ケアの介入によって口から食べるための支援をするばかりか後のADLの向上に寄与するための早期リハビリテーションとしての口腔リハビリの介入を実践。もちろん、急性期から、回復期、維持期にわたる継続的なケアと多職種の連携を重視。その支援は当然のことながら在宅にまで及ぶ。坂の町長崎での在宅ケアはその地形から困難を極めるが、「斜面研究会」を結成し、工学研究者等の協力も得ながら、障害者の移動介助まで含めたトータルなケアを目指している。講演会では、歯科医師や歯科衛生士が一人の患者なり、在宅の障害者なりを巡って対処法を話し合う"ケアカンファレンス"に積極的に参加することで、「口から食べる」という共通の目標を設定でき、連携の取れたチームアプローチにより、効率的に支援できることを強調された。

 大塚 恵氏は老人病院である伊予病院の看護婦。伊予病院は口腔ケアを積極的に取り入れようと伊予歯科医師会と連携。2名の歯科医師が治療とケアに入っている。歯科医師を講師とした口腔ケアの院内勉強会で勉強したことを現場で生かすため、経管栄養(経鼻チューブ)の患者さんにOE法(栄養補給時のみ口から食道へ間歇的にチューブを挿入するよりリハビリにかなった方法)を試み、一定の効果を上げた事例報告がされた。

 松本 満津絵氏は特養「いよあいじゅ」の主任ワーカーを務めている。1年前より伊予歯科医師会と連携して口腔ケアに取り組んできた。高齢者にとって口から食べることがいかに深く生活に関わっているか、入所者のエピソードをユーモアを交えて紹介した。口腔ケアのモデルケースを数名ピックアップし、各々について、歯科医師と歯科衛生士のほぼ週1回の専門的口腔清掃を行った。その中で、SLEに罹患し、リウマチや廃用症候群により、QOLの著しい低下をきたし、経口摂取不能になり、経鼻チューブに至ったケースについて、口腔ケア実施と共に、短期間で経口摂取へ復帰したことを報告した。ほぼ経口摂取を諦めていたケースのため、口から食べ出したことは、事件として施設中に号外が飛んだそうである。生き生きとした表情や、笑顔がよみがえり、ほとんど口数のなかった人がしっかりコミュニケーションし始めたという。これを契機にワーカーたちの口腔ケアに取り組む目つきが変わってきたという。

 竹尾 美都子氏はフリーランスの歯科衛生士。歯科医師との委託契約により在宅や施設の訪問歯科衛生指導に赴いている。単に歯ブラシによる口腔清掃のみならず、摂食嚥下障害を改善すべくトータルに体位や四肢・体幹のストレッチ、リラクゼーションを用いた口腔リハビリを行なっている。脳内出血既往の在宅患者の口腔ケアを上記のトータルなケアを通じて行っている様子を、ビデオにより発表した。

 安部 博恵氏は歯科医院のパートをしながら、それ以外の時間に、やはり訪問歯科衛生指導を在宅・施設で行っている歯科衛生士。在宅で関わった脳血管障害の事例について、本人の意欲、家族の関わりなどの環境因子も視野に入れながら、口腔ケアによって変わっていく障害者の様子を発表した。在宅ならではの生活観がにじみでるような発表であり、この分野における歯科衛生士の生きがいを提示した。

実行委員長 升田 勝喜

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